認知症で「人が見える」のはなぜ?|レビー小体型認知症の幻覚と家族の対応

「昨日も来ていた男の人が、またそこにいる」

そう言いながら、何もない廊下を見つめる。認知症の方を介護しているご家族から、このような相談を受けることがあります。

最初は聞き間違いかと思ったり、冗談だと思ったりすることもあります。

しかし、何度も同じような話が続くと、

「もしかして認知症なのでは」と不安になる方も少なくありません。

実際、認知症では「人が見える」「動物が見える」といった幻覚がみられることがあります。

特にレビー小体型認知症では比較的よくみられる症状のひとつです。

目次

本人には本当に見えている

家族が最初に戸惑うのはここかもしれません。

「そんな人いないよ」と伝えても、本人は納得しません。

それもそのはずで、本人にとっては本当に見えているからです。

例えば、「窓のところに女の子が立っている」と言われたとします。

家族から見ると何もありません。

しかし本人には、服装や髪型まで分かるくらいはっきり見えていることがあります。

そのため、「誰もいないよ」と説明されると、

「どうして見えないの?」と逆に不思議に感じることもあります。

認知症による幻覚は、嘘をついているわけでも、ふざけているわけでもありません。

本人にとっては現実の体験に近いため、周囲との認識の違いが混乱や不安につながることがあります。

レビー小体型認知症では幻視が比較的多い

認知症にはいくつか種類がありますが、

「人が見える」「動物が見える」といった幻視が比較的よくみられるのがレビー小体型認知症です。

特徴的なのは、そのリアルさです。

「誰かいる気がする」という曖昧なものではなく、

「小学生くらいの男の子が3人いる」「赤い服を着た女性が立っている」
「犬が廊下を歩いている」というように、かなり具体的に話すことがあります。

家族からすると、本当に見えているような話し方をするため

驚くことも少なくありません。

また、時間帯によって症状が強くなったり弱くなったりすることもあります。

昼間は落ち着いていても、夕方から夜にかけて「人がいる」と訴えるようになるケースもあります。

「亡くなった人が見える」は認知症?

亡くなった配偶者が見える。

昔飼っていた犬が見える。

親が部屋に来ていると言う。

家族としては「認知症が進んでしまったのでは…」と心配になりますが、

実際には認知症だけが原因とは限りません。

高齢者では、レビー小体型認知症、せん妄、

睡眠障害、体調不良や脱水などでも似た症状がみられることがあります。

そのため、「亡くなった人が見える=認知症」と決めつけるのではなく、

全体の状態を確認することが大切です。

家族が疲れてしまうことも少なくない

認知症の幻覚で大変なのは、本人だけではありません。

例えば夜中に、

「庭に誰かいる」「知らない人が部屋に入ってきた」

と言われることがあります。

家族が確認しても誰もいない。説明しても納得してもらえない。

そして翌日になると同じことが繰り返される。

こうした対応が続くと、家族も睡眠不足になりますし、精神的にも疲れていきます。

実際には、「本人よりも家族の方が限界に近づいていた」というケースも珍しくありません。

「そんな人いない」は逆効果になることもある

家族としては事実を伝えようとします。

それは自然な反応ですし、間違いではありません。

ただ、本人にとっては実際に見えているため、

「いない」と強く否定されることで不安や混乱が強くなることがあります。

場合によっては、「家族が隠している」「自分だけ騙されている」と感じてしまうこともあります。

その結果、怒りっぽくなったり、不信感が強くなったりすることもあります。

まずは不安な気持ちを受け止める

幻覚への対応で大切なのは

「見えているものが本当かどうか」を議論することではありません。

本人が何を感じているかに目を向けることです。

例えば、「部屋に知らない人がいる」と言われたら、

「怖かったね」「気になったんだね」という反応の方が落ち着くことがあります。

不思議に思うかもしれませんが、

本人が求めているのは正解ではなく、安心感です

もちろん、すべてのケースでうまくいくわけではありません。

しかし、まず不安な気持ちを受け止めるだけでも、本人が落ち着くことがあります。

こんなときは相談を考えたい

幻覚そのものが問題というより、生活への影響が出ているかが大切です。

 ✅夜眠れなくなっている。

 ✅幻覚を怖がって外出できない。

 ✅転倒や徘徊につながっている。

 ✅家族の負担が大きくなっている。

このような場合は、一度医療機関へ相談することをおすすめします。

認知症だけでなく、体調不良や薬の影響などが関係していることもあります。

まとめ

認知症で「人が見える」という症状は、家族にとって非常に驚きの大きい症状です。

特にレビー小体型認知症では、実際にはいない人や動物が非常にリアルに見えることがあります。

本人にとっては現実に近い体験であるため、

強く否定されることで不安や混乱が強くなることもあります。

そのため、「間違いを正す」ことよりも、

「怖かったんだね」「気になるね」と

気持ちを受け止める関わりの方がうまくいくことがあります。

また、認知症の幻覚は本人だけでなく、介護をする家族にも大きな負担を与えます。

家族だけで抱え込まず、困ったときには早めに医療や介護サービスに相談することが大切です。

【この記事の監修医】
 今雪 宏崇
(精神科医・心療内科医 川口メンタルクリニック院長)

精神保健指定医。地域のメンタルヘルス支援に携わる。

外来診療に加え、訪問診療にも注力し、通院が難しい方へのサポートも行っている。

▶ 詳しいプロフィールは院長紹介ページをご覧ください。
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